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日本食糧新聞IT版連載

成長へのモデルチェンジ「食の安全を担保する情報管理」

 
 品質規格書を巡る情報整備(DB化)では、製造現場での品質管理及び情報管理の仕組み構築・運用がなければ、意味がありません。
 品質規格書のデータベース化を巡る諸問題と、品質重視の生産体制への転換方法を伝える日本食糧新聞社IT版の特集記事取材にBSSが協力しました。(2006年6月~2007年3月)



品質情報DB化の必要性と混乱/2006年6月2日

忘れられた二つの視点

残留農薬等ポジティブリスト制(PL制)への対応を巡り、再びトレーサビリティが話題だ。しかし、現実にはトレースしきれないという事態とともに、前提条件の不備が指摘されている。原材料の品質情報を紙で管理している場合が多いのだ。成分や規格を調べるのに膨大な手間がかかる。近年、品質情報のデータベース(DB)化が急速に進行。成果の一方で、業界レベルの課題も生じている。本連載では、大きな期待を担っている品質情報DBの課題と盲点を取り上げ、真に安全を担保しうるあり方について探っていく。

食の安全を巡る規制強化で、製品や原料の品質規格書を再点検する動きが活発だ。しかし、これらは紙で管理されている場合が多く、調査には膨大な時間がかかる。事態打開に向け、品質情報のデータベース(DB)を構築する企業が増加。しかし、ある混乱が起きている。仕入先に求めているデータ提供方式がバラバラなのだ。仕入先では個別にシステム対応せざるを得ない事態が発生。業界全体でのデータ連携に関する視点が中途半端な状態になっている。もう一つ忘れてはならない視点がある。品質規格書は「こういうものを作ります」という宣誓書。「こういうものです」という証明書ではない。製造現場での品質保証体制があればこそ、食の安全は担保されるのだ。

1.品質規格書を巡る問題

製品の重量やサイズ、原材料、栄養成分など様々な規格情報を管理する品質規格書。汎用的な表計算ソフトを使い、得意先側でフォーマットを作っている場合が多い。仕入先とは電子メールでファイルをやり取りし、内容の合意が取れた段階で仕入先が印刷・押印し、原本として郵送する。得意先では、年1回の頻度で内容の更新を求めることが多い。
規格書の作成では、仕入先と得意先の双方で大きな負担を背負っている。
仕入先では得意先の数だけ異なるフォーマットが存在。同じ情報でも各社ごとに入力する必要がある。得意先のフォーマットに合わせ自社システムを構築しても、フォーマットが変われば費用を掛けてシステム変更せざるを得ない。規格書を作成する部署に自然と情報が集まってくるわけでもない。工場の担当者に問い合わせなければならないこともあり、手間と時間がかかるのだ。
得意先にも負担がある。改ざんを憂慮し紙での管理を基本としているため、更新情報を自社の品質規格書に再入力しなければならない。転記ミスの可能性を秘めている。原料の配合が企業秘密とされ、正確な情報を入手できない場合もある。仕入先によっては記入漏れやミスなどがひどいこともあり、チェックや再提出にかなりの時間がかかる。情報が確定しないまま表示作成を進めなければならない場合もあるのだ。
近年、アレルギー表示義務化やPL制移行といった安全面の規制強化で、規格書の内容を緊急調査する機会が増加。規格書を一枚一枚点検する日々が続いている。情報量と頻度が膨大なため、紙での管理は限界にきている。業務を継続するには、DB化以外方法がないと考えられるようになっているのだ。

2.品質情報DB化の混乱

 圧迫される品質保証業務の状況打破に向け、食品小売業やメーカーを中心に品質情報DBを構築する動きが活発だ。手間と時間をかけず正確な品質情報を整備することに向け、大きな一歩を踏み出した。しかし、この一歩を揺るがす事態が起きている。仕入先に求められているデータ提供方式が、得意先ごとにバラバラになりかねないのだ。従来のようにフォーマットがバラバラなのも問題ではあったが、データ提供方式が異なると仕入先側では個別にシステム対応せざるを得なくなる。仕入先側である某食品メーカーでは、自社システムと自動的にデータ連携させようと考えたが、「入力する方法はない」と言われて、泣く泣く同じ情報を手入力している。業界レベルで品質情報を整備せざるを得ない情勢にも関わらず、データ連携に関する視点が中途半端な状態になっている。会社間でデータ連携するための指針が全くないのだ。データを受け渡しする手順を早急に決めるべきである。
品質情報DB化の混乱の中で、ともすると忘れ去られている重要な視点がある。品質規格書はあくまでも規格。「こういうものを作ります」という宣誓書だ。食の安全を担保するのに不可欠な入口ではあるが、出口ではない。「規格に則って製造されています」ということを保証してはじめて、安全は担保されるのだ。製造現場での品質保証体制なくして、真の品質情報たりえない。製造ロットごとに実際に測定したデータを管理していなければ、情報に対する信頼性は低いのだ。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)

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品質情報DBの業界標準は可能か?/2006年7月7日

標準化と差別化の境目を探る
品質保証と生産管理の分別が大切

 生協や大手食品メーカーで品質規格書のデータベース(DB)化が進むなか、同データの受け渡し方法を業界で標準化すべきとの意見が増えている。得意先が指定する独自の登録ソフトや入力方法に個別対応せざるを得ない事態が相次いでいるためだ。データ提供側では人手を掛けてしのいでいるのが現実である。標準化を巡る議論の中心は、どこまでの項目を標準化の対象とするかだ。視点の違いにより、情報共有すべき項目と、すべきでない項目とが交錯している。品質保証に必要な項目なのか、メーカーに任せるべき生産管理上の項目なのか、分別する視点が大切だ。

1.品質情報DB化の背景

 商品や原材料の仕様を記した品質規格書は、汎用的な表計算ソフトで作られていることが多い。このようなソフトはユーザー数が多いだけでなく、データの提供を求める側(一般に仕入元側)がフォーマットを自由に設計できるメリットがある。しかし、自由度の高さはデータを提供する側でも同様だ。入力された内容が不正確でも、データの登録や送信を問題なく行えてしまう。データ提供を受ける側では、情報内容に誤りがないか隈なく確認しなければならないのだ。
正確な情報を入手しても課題は残る。一括表示の作成など業務システムとデータ連携していないことも多く、データでもらった情報を転記しているのが一般的だ。アレルギー表示の記載漏れなど転記ミスをおかすヒューマンエラーも珍しくない。
表計算ソフトでは、複数のシートやファイルにわたって検索を行うことも容易でない。特定の原産地のものを使った原料を検索しようにも手間がかかる。詳細な品質情報を巡る問い合わせに、迅速に対応できなくなってきたのだ。
入力や転記のミスを防ぎ、迅速な検索を実現する仕組みとして、品質情報のDB化を進める食品企業が増えている。

2.DB間の連携は可能か

 品質情報のDB化が進むなか、DB間の連携の問題が生じている。得意先が導入したDBシステム(DBソフト)が異なる場合、それぞれに対応した入力ソフトを導入しなければならないのだ。表計算ソフトさえあれば済むという状況ではなくなってきた。異なるDBシステム間でも、簡単にデータの受け渡しができる仕組みが求められている。ある食品メーカーの関係者は、理想論としながらも、図1のようなイメージが望ましいという。業界共通のデータセンター(DC)を設け、同DCの送受信データの形式にあえば、どのようなDBシステムを導入してもデータ連携できる仕組みだ。このような仕組みを模索する動きも、現実に出てきている。
 DB連携の議論で最も重要なのが、どのような項目を標準化(情報共有)の対象とするかだ。データ提供を求める側は、差別化や不測事態への備えを理由に、あらゆるデータの提供を求めてくることも多い。一方、データの提供側は企業秘密を理由に出したくない情報があるのも現実だ。視点の違いにより、思惑が交錯しているのが実態である。受発注データのやり取りでさえ標準化できていない現状を考えると、多数の取引先同士でデータ連携することは容易ではない。しかし、糸が複雑に絡み合っていない今だからこそ、適切なインフラ整備を行える状況にあるとも言える。

3.品質保証か生産管理か

 標準化を巡る議論のなかで、忘れてならない視点がある。食品メーカーの場合、商品のレシピ情報には二種類あることだ。商品レシピと製造レシピである。図2のように、前者が使用する原材料やその属性を定義しているのに対し、後者は製造する際の原材料の形態や工程、歩留、人時を定義している。同じレシピという名称ではあるが、管理の目的が違う。商品レシピが「このような原料を使って作ります」という品質保証情報である一方、製造レシピは「原料をこのように使います」という生産管理情報である。実は後者こそ、食品メーカーの腕の見せ所なのだ。与えられた品質要件を満たす最も効率的な製造方法を定義するものだからである。しかし、この現実を見誤るかのような事態が出てきている。製造レシピの情報まで提供を求める動きだ。小売業の一部での動きに過ぎないが、食品メーカーの腕の見せ所まで標準化されかねない事態だ。製造レシピこそメーカーとして差別化できる独自項目。品質保証上の標準化の議論とは一線を画されるべきものである。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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ブラックボックス化された製造DB/2006年8月4日

時代の流れが旧来型モノづくりの発想転換を迫る
レシピ一元化が食の安全とコスト削減のカギ握る

 食品製造の際に不可欠な製造レシピ。原材料や製造上の特性もあり、その作成には現場の勘と経験が大きく影響している。その反面、それが製造レシピをブラックボックス化させ、製造現場の問題点を見えなくさせてしまっているのも事実だ。これまでは「とくかく作ることが第一」という旧来型のモノ作りの発想が、これを擁護してきた。しかし、「多品種小ロット生産」「廃棄ロス削減」「トレーサビリティ」という時代の流れは、この発想に転換を迫っている。流れに合わせ事業展開を行っている食品メーカーでは、食の安全と製造コスト削減のカギとして、レシピ情報の一元的管理に取組み始めた。
 

1.製造レシピを補完する「現場の勘と経験」

 前回見たように、食品メーカーのレシピには大きく分けて二種類ある。商品開発部門などが作成する商品レシピと、製造部門などが作成する製造レシピだ。前者が一食分のレシピを管理しているのに対し、後者は一回の製造単位分(バッチ)のレシピを管理している。商品レシピに実際の製造数量分を乗じれば製造レシピになるかというと、そう単純ではない。例えば馬鈴薯を原料として使っている食品メーカーで100?分の原料が必要な場合、毎回同じ数だけの馬鈴薯を投入すればいいというわけではない。一つとして同じ大きさ・形状の馬鈴薯はないのだ。1000個で済む時もあれば、1100個必要な場合もある。製造する食品機械の性能によっても、必要な原材料数が異なる場合もある。その曖昧さを補完しているのが、現場の勘と経験なのだ。

2.ブラックボックス化する製造レシピ

 製造レシピには文字通り、製造に必要な情報を盛り込まなければならない。投入する原材料はもちろん、工程(製造方法)や歩留、要員などだ。前述の通り、バッチ単位のレシピでなければ製造現場の実態に合わない事情がある。そのため製造レシピをバッチ単位で作成している食品メーカーがほとんどだ。標準原価も、バッチ単位で計算されたものが基本になる。
 製造レシピの作成は、現場の班長やリーダーなどが担当する場合が多い。汎用的な表計算ソフトで作っていることがほとんどだ。商品開発部などから送られてきた商品レシピを転記またはコピーし、製造時に必要なバッチ単位の原材料数量などを追加入力していく。受注数を入力すると、自動的に原材料の所要量が算出されるよう式を組んでいることも多い。それをもとに現場に製造指示を出している。
製造レシピは現場の勘と経験に裏打ちされている反面、特定の担当者のみぞ知るブラックボックスとなっていることも多い。しかしこれは、「とにかく作ること第一」といった旧来型モノづくりの発想があればこそ、成立する話だ。食の安全や廃棄ロス削減への取組みが製造現場の大きな評価項目となる中、製造レシピをブラックボックスから解放することが、その突破口として認識されはじめている。

3.製造レシピ一元化が時代の流れに

 「多品種小ロット生産」「廃棄ロス削減」「トレーサビリティ」という、時代の流れに合わせて事業展開を図っている食品企業を見たとき、ある共通点が浮かぶ。製造レシピを一元的に管理する仕組みに手をつけているのだ。情報共有ができるように製造レシピを一元的に管理することで、製造実績や廃棄ロスを踏まえたレシピの見直しや、原材料の無駄な発注を防ぐことを目指している。
 製造現場も含めてトレーサビリティに取組んでいる食品企業では、製造レシピの一元化を図るとともに、商品レシピや原材料規格書、検査報告書とのデータベース連携を構築している模様だ。トレーサビリティシステムと呼ばれているものの中には、書類上や伝票上で遡及・追跡する形式のものが多いが、実際の製造で投入した原材料の検査結果まで連携させている例はまれだ。「規格に則って製造されています」ということを保証してはじめて、安全は担保される。製造現場まで含めた品質保証体制のあり方が具体化しはじめた。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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「正しい表示」への仕組みづくり/2006年10月6日

生産管理で原料規格書の最新データを活用
モノづくりのあり方にも変化

 アレルギー物質を含む食品の表示漏れや原産地表示の誤記載などを防ぐため、正しい表示の徹底に向けた仕組みづくりが着実に広がっている。原材料規格書(以下、規格書)の見直しやデータベース(DB)化を進めてきた企業の中には、規格書の最新データを生産管理システムに取り込む仕組みを構築するところも出てきた。この動きは、企業規模の大小を問わないものになってきている。食品安全に関する規制の強化と有力小売業の商品戦略が、食品メーカーのモノ作りのあり方にも変化をもたらしている。
 

1.正しい表示を徹底するための要件
 

2003年の2月から3月にかけ、アレルギー表示に関わる食品衛生法違反が相次いで報告された。マスコミで大きく報道されたこともあり、食の安全に対する社会の目は連日厳しさを増す。「食の安全」が語られる際、大手乳業メーカーの食中毒事故やBSE(牛海綿状脳症)の問題が持ち出されることが多いが、品質保証関係者の間では表示ミス防止への関心が断然高い。近年、規格書をはじめとする品質情報のDB化を行う食品企業が増えたが、実はアレルギー表示の義務化がその大きなきっかけという場合が多い。前述の食衛法違反事例の当時者となった企業でも、その後品質情報のDB化が急ピッチで進められた。
 正しい表示を徹底するには、品質情報DBを二つの側面で効果的に運用していく必要がある。一つは、DBには常に正確な情報が登録されていること。もう一つが、DBの情報と実際に表示する情報とを一致させることだ。表示情報の作成をシステム化している企業でも、規格書を見ながら手入力で情報を登録・更新している例も多い。このような場合、入力漏れや転記ミスといったヒューマンエラーの問題が常につきまとう。

2.表示ミス防止へ向けた製造現場の取組み
 
規格書のDB化を図ってきた企業の中には、製造現場でもこのDBを活用しようという動きが出てきた。実際に表示する情報とDBに登録されている最新情報を、人手を介さずに常に一致させられる仕組みだ。ヒューマンエラーによる表示ミスの発生を防止するとともに、表示作成業務の効率化も期待されている。
 具体的な仕組みとしては、原料入荷時に同原料の規格データを品質情報DBから取り込み、原料のロット番ごとに品質情報を把握できるようにするやり方が多い。製造段階では、生産管理システム上で製造ロットごとに投入原料のロット番号が関連付けられていることから、実際に表示する情報とDBに登録されている最新情報を一致させることができるのだ。惣菜や弁当など、製造段階で表示作成を行っている企業の一部では、すでにこのような取組みを始めている。

3.モノ作りのあり方に変化

製造ロットごとに品質情報DBの最新情報を関連付けようという取組みは、企業規模の大小に関わりなく行われ始めた。食品の安全性を巡る規制強化もさることながら、それ以上に小売業の商品戦略に対応した取組みとも言える。近年「合成添加物不使用」を表示した商品が続々登場しているが、食品メーカーではそれに相応しい体制を整備しなければならなくなったのだ。
 食品工場では製造レシピをもとに生産を行うが、この情報はあくまでモノ作りの情報。「どの原材料をどう使う」というのが要素だ。合成添加物不使用の製品を作るには、それに対応した原材料を投入しなければならない。しかし、製造レシピを見ただけでは、その原料が合成添加物を含んでいるは分からないのが一般的だ。「この原料は合成添加物を含んでいない」ということが確認できなければ、生産を行えない。とはいえ、生産のたびに原料規格書を確認するような手間はかけられない。製造ロットごとに最新の品質情報を関連付けられる効率的な仕組みが、中堅・中小企業でも求められるようになってきたのだ。
 欠品や過剰生産を防ぐための体制を必死で追求してきた製造現場。しかし、食品安全規制への対応とともに、得意先の商品戦略に適ったモノ作り体制が構築できなければ、気付かぬうちに撤退を余儀なくされる状況に追い込まれてしまう。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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大阪デリカ/2006年11月10日

表示ミスの防止体制を強化
ヒューマンエラーのリスク低減へ
品質確保の仕組みも高度化

 関西を地盤に展開する量販店イズミヤ?の関連会社で、惣菜製造を手掛ける大阪デリカ?は、表示ミスの防止体制強化に向け、ITを活用した仕組みの構築に着手した。これまで負担の大きかった表示作成業務の自動化を図り、ヒューマンエラーのリスクを低下させる。品質保証や製造指示の要であるレシピ情報が簡単に作成・利用できるようになり、加工マニュアルの管理も効率化。変わらぬ美味しさを提供できる品質確保の仕組みも高度化させる。
 
1.表示作成に追われる商品開発部門
 同社は、イズミヤほか同社が運営する惣菜店向けに約100アイテムの商品を製造する。イズミヤの製品改廃は毎週行われており、それに応じた表示作成業務の負荷も高い。とりわけアレルギー表示と添加物表示の作成では入念な確認を行っているため、膨大な手間と時間が掛かる。
 表示作成は商品開発部門が担当。製造仕様書に記載された原材料構成と仕入先が入力する原材料カルテ(※)をもとに表示情報を作成する。原材料構成は、盛りつけ前の半製品レベルから順次、一次原料、二次原料とツリー状に細かく管理。それぞれの原料について、どのようなアレルギー物質や添加物が含まれているかを、原材料カルテを参照しながら一つひとつ登録していく。製造仕様書はアイテム単位で換算して100種類以上、仕入先から入手したカルテの総枚数は500枚以上に及ぶ。いずれも汎用的な表計算ソフトで作られているが、アレルギー物質や添加物の入力は手作業で行われており、膨大な時間が掛かる。
実際に表示情報を作る際には、その製品に含まれるアレルギー物質や添加物を集約しなければならない。抜き出し漏れを防ぐため、3~4回は確認作業を行っており、担当者に掛かる負担も大きい。商品開発部門では、これらの作業に業務時間の半分以上を費やすことも珍しくない。本来の開発業務が圧迫されかねない状況となっていた。

2.表示情報作成を自動化
表示作成での負荷軽減に向け今春、レシピ管理システムの再構築に着手した。製造仕様書と原材料カルテの情報を関連付け、表示情報の作成を自動化する仕組みだ。原材料のコード番号を入力すると、それに含まれるアレルギー物質や添加物の情報を、カルテから自動的に引っ張ってくる。これまでのように、カルテを見ながら一つひとつ登録したり、集約をしていく手間が減り、表示情報作成に掛かる時間が激減する。集約時の漏れの心配もなくなるため、ヒューマンエラーを生み出すリスクも低下する。例えばグリーンサラダ。同商品は、JAS法(農林物資の規格化と品質表示の適正化に関する法律)により、主要原料の原産地表示をしなければならない。品質表示基準では「国産」という表示でも問題ないが、同社は「都道府県名」まで表示するようにしている。このため産地変更による表示情報のメンテナンスも頻繁だ。しかし、新システムでは原材料の使用期間を予め設定できるため、従来のように産地変更の直前でなければ表示情報を変更できないということはなくなる。

3.品質確保も高度化へ
 今回の仕組みでは、レシピに関する情報を相互に関連付け、より付加価値の高い情報を作成することができる。同社は、製造担当者が変わっても、同じ美味しさを実現できる仕組みを模索し始めた。
現在、製造方法を記載した加工マニュアルは商品開発部門が作成している。商品の改廃や製造方法の変更があるたびに更新し、製造部門へ配布。製造部門は同マニュアルを紙で保管し、必要に応じて参照している。商品の頻繁な改廃に合わせ、製造品質を継続的に向上していくには、最新の加工マニュアルを効率的に作成・配布できる仕組みが有効だ。新システムでは、製品や原材料の情報を関連付けることで簡単に加工マニュアルを作成できる。また、システムを通じて誰もが簡単にマニュアルを参照することも可能だ。同社は、マニュアル作成の効率化を図るとともに、最新の加工マニュアルを製造担当者が容易に取り出せる仕組みを検討している。ニーズに合わせて加工マニュアルを手間なく更新・配布できるようになり、いつも変わらぬ美味しさを誰もが提供できる体制が強固になる。
※原材料カルテ=原材料の詳細な属性を記録した文書。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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製造現場を含めた管理の仕組み/2006年12月8日

原料識別コードの一元化が鍵
新コードへの早急な移行は禁物

 アレルギー表示や原産地表示など食品表示を巡る規制強化により、原材料情報を記録した帳票を再点検する動きが活発だ。情報を迅速に把握するため、帳票をデータベース(DB)化する企業も増えている。しかし、これはあくまで書類上の話。帳票通りの原材料が、製造現場で使われているかは別だ。近年、この点も含めた情報管理の仕組みに着手する食品メーカーが現れ始めた。鍵を握るのが、原料を識別するコードを全社で一元化できるかだ。製品の安全性担保に留まらず、業務効率を改善できるかにも影響する。しかし、実際の運用では注意すべきことがある。新しいコードへ一気に移行しないことだ。最初から百点満点を目指すと無理が出る。

1.書類と実態の乖離
 02年に発覚した鶏肉を巡る偽装表示や、その後03年に相次いだアレルギー表示違反の影響で、原材料情報を再点検する動きが一気に起きた。原材料に含まれるアレルギー物質や添加物などの情報は、原材料規格書と呼ばれる帳票で保管されていることが多く、小売業やメーカーは膨大な枚数の規格書を点検し続けた。紙での確認に手間取ったこともあり、その後、規格書をDB化する動きが相次ぐ。この動きが食品業界で珍しくなくなる中、ある声がささやかれ始めた。「規格書をDB化しても、規格書通りの原材料で製造されなければ、食の安全は担保されない」という声だ。書類と実態は、いつも同じとは限らない。一部の大手量販店は、この部分まで担保できる仕組みを要請し始めた。

2.鍵を握るコード一元化
 食品製造で最も基本となる情報はレシピ(配合表)だ。製品を作る際に必要な原材料の配合量や加工方法を定めている。一般的にレシピは商品開発部門で作成され、これを出発点に品質保証部門で原材料規格書、製造部門で製造マニュアルが作られる。規格書やマニュアルに記載する項目には、原材料名など既にレシピに記載されている情報も多い。しかし、各部門で再び転記・入力している場合がほとんどで、重複作業が発生している。転記ミスが起こる可能性もあるため、確認作業にも膨大な時間がかかる。勤務時間の5割をこの作業に費やしている例も珍しくない。
レシピや規格書、マニュアルでは、原材料を簡単に識別できるよう、各原材料に数桁の数字で表した番号(コード)を振っていることが多い。この番号も部門ごとにバラバラなのが実態だが、これを統一(一元化)できれば、再入力などの重複作業や転記ミスもなくなる。元になる情報だけ入力・更新すれば、その他はコードを媒介に自動的に更新されるからだ。原材料規格書と製造マニュアルで情報が異なるということはなくなり、「規格書通りの原材料で製造されなければ、食の安全は担保されない」という不安にも対処できる。このような取組みは、大手食品メーカーのみならず、中堅メーカーでも着手され始めた。

3.新旧コードの並行利用が重要
 コードの一元化で全てがスッキリするかというと、そう単純ではない。新コードに一元化しても、製造現場には旧コードの付いた原材料在庫などが残っている場合がほとんどだ。作業者も旧コードでの作業に慣れており、新コードでの運用に一気に移行すると混乱が生じる。現場でのスムーズな運用を果たすには、当面は、新コードと旧コードを同時に扱えるシステムにしておくことが必要だ。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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安全と効率を両立/2007年2月2日

トレーサビリティーを在庫削減に応用

「小ロット生産体制」構築図る

食の安全を担保する仕組みを、在庫削減に応用する取組みが現れ始めた。トレーサビリティーシステムのコード(数桁の数字で表された番号)を使って、原料や半製品の在庫を把握。正確な数量をつかんで「小ロット生産体制」の構築を図る。ムダな発注や生産を防ぐとともに、製品の賞味期限管理を徹底する。突発的な需要変動への対応や、昨今の話題である内部統制にも大きな効果を発揮する。

1.非効率な大ロット生産
 食の安全を確保するには、原材料の消費期限や含有するアレルゲン、添加物などの詳細情報を、製造部門でも把握できることが必要だ。そのためには、前回述べた通り、部門ごとにバラバラとなっている原材料コードを一元化しなければならない。
 製造部門にとっては、安全な製品を作るとともに、製造原価を安く抑える取組みも重要となる。原価低減の手段としては、大量生産が長年志向されてきた。しかし、在庫を資産としてではなく、負債として捉える考え方が浸透。人口減少や消費単位の少量化が本格化するにつれ、需要量を上回る生産は廃棄ロスとなり、歩留を悪化させる。小売業の中には、賞味期間の6分の1を納入期限として設定するところもあり、鮮度という意味でも製品はたちまち陳腐化してしまう。原価低減手法として、大量生産が通用しないことは間違いないのだ。

2.小ロット生産を阻む壁
 大量生産(大ロット生産)の限界を打開するため、
小ロット生産体制の構築が絶えず叫ばれてきた。しかし、考え方としては浸透したものの、実際の行動には結びつかなかった。欠品に対する不安がつきまとっていたのだ。製造工程中に滞留している原材料や半製品の数量を正確につかめなかったこともあり、余分な生産や原材料の発注もやむことはなかった。
 生産設備の問題もある。設備の変更は、生産拡大時にはよく見られるものの、小ロット対応のための設備投資や改善という話は少ない。自動車や電機業界と比べ、生産技術の専門家が極端に不足しているという事情も影響している。

3.夢から現実へ
 「食の安全・安心」への取組みとして、トレーサビリティー(履歴追跡)システムの構築が珍しくなくなってきた頃、小ロット生産体制の推進に風穴が開き始めた。履歴追跡では、原材料や半製品、製品のコード(数桁の数字で表された番号)を関連づける必要があるが、このコードを利用することで、在庫の数量把握や情報共有を行う基盤も整ったのだ。原材料の投入量まで管理できるトレーサビリティーシステムの場合、コード単位で投入量を集計すれば、自動的に在庫数量がつかめる。「食の安全・安心」に応える仕組みと、在庫削減を追求する仕組みが一体となっているのだ。
 正確な在庫数量がつかめるようになったことで、小ロット生産体制の構築が夢ではなくなった。過剰生産を抑制でき、在庫管理も容易になる。ロットごとに賞味期限管理を徹底し、得意先の要求に合わせた商品供給を迅速に展開できる。小回りのきく生産体制のため、突発的な需要変動にも対応可能だ。正確な情報を共有する仕組みとすれば、内部統制の手段としても効果を発揮する。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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小ロット生産にどう挑む?/2007年3月9日

“モノの流れ”の把握が第一歩

在庫管理なくして食の安全なし

前回見たように、食の安全と生産性向上を同時に追求する手法として、小ロット生産体制の構築があげられる。しかし、段取り替えの増加や欠品への不安もあり、同生産体制への移行は容易ではない。取組みの第一歩として求められるのが、工場内でモノがどう流れているのかを把握することだ。そのうえで、この流れをコンパクトにする仕組みを構築することが必要となる。原材料や半製品、製品の在庫を確実につかめなければ、本当の意味での食の安全に近づくことはできないのだ。

1.小ロット生産の効果
 従来の大量ロット型見込み生産は、原料や製品の在庫を抱え込む危険性と常に背中合わせにある。設備稼働率の向上と原料コストの削減を果たす有効な生産体制ではあるが、それに見合った需要がなければ、たちまち企業経営を悪化させる。 
問題はそれに留まらない。供給過剰で不要となった原料の廃棄をいつまでもためらえば、食の安全を冒す生産に手を染めてしまいかねないのだ。
食品業界では近年、これまで月次であった生産計画を週次に短縮化するメーカーが相次いでいる。より詳細な生産スケジュールに至っては、通常1日単位のものを2時間単位にまで精緻化しているメーカーもある。いずれも販売動向に合わせてフレキシブルに生産調整を実施し、小ロット化により余分な原料調達や製造を行わないという体制を構築する狙いがある。
市場動向に沿った効率的な生産体制を志向する小ロット化だが、食の安全という側面でも効果を発揮しつつある。製造するものを切り替える際の段取り替えが増えたことで、設備・機械の点検や清掃を頻繁に行えるようになったのだ。こまめな原料調達の結果、鮮度の高い原料を生産に回せるようになってきている。

2.小ロット化への移行方法
 小ロット生産体制への移行は、段取り替えの増加や欠品への不安を呼び起こすこともあり、現場の理解を得るのが容易ではない。具体的にどの程度のロットにまとめるかも、製品の特性や設備・機械の性能、取引先との関係により、各社・各工場により事情が異なってくる。まさにノウハウともいえるものなのだ。
 段取り替えの増加は、部分的に見れば効率を悪化させる。そこで必要になってくるのが、工場内のモノの流れを改善することだ。いわゆる工場内物流の改善である。トヨタ自動車の生産性の高さは、まさに工場内物流の継続的な改善に因っている。小ロット生産体制を実行するには、ここにメスを入れなければならない。
 改善の第一歩は、工場内でモノがどのように流れているのかを確実につかむことである。原料や半製品、製品の正確な在庫数量を、常に把握できる体制が必要だ。そのうえで、小ロット化に向けロットの縮小を図り、必要な量だけ流していくというプロセスを繰り返すのである。

3.命運にぎる在庫管理
製造現場を巻き込んだ情報管理ができてこそ、本当の意味での食の安全が担保される。本連載の前半で述べた「全社的な品質情報の一元化」は、その第一歩に過ぎない。一元化した情報を踏まえ、正確な在庫管理や生産管理、品質管理を行うことで、真の目的は達成される。
在庫がわからなくても製造はできる。しかし、在庫を正確につかめなければ、会社を存続できない時代に突入しているのも事実だ。在庫管理の巧拙は、生産性の問題のみならず、食の安全を担保できるかにも直接影響している。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)


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